薄切りのパン

En faire des tartines.

ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』感想

1月中旬から始まったミュージカル『ロミオ&ジュリエット』が明日、大千穐楽を迎えます。1月下旬の観劇がきっかけで広瀬友祐さんのファンになった私としては、『ロミオ&ジュリエット』はとても特別な作品になりました。

 東京公演で広瀬さんに心奪われ、なんとかしてもう一度広瀬さんのティボルトを観たいと思い「そうだ、梅芸行こう」と決意しました。ミュージカルに興味はなくても宝塚と演劇は好きだったので劇場に行く機会はわりとありましたが、大体のものは東京で事足ります。だから、舞台のために遠征するのは初めてでした。早速チケットを取り、ホテルと新幹線を手配し、あっという間に後戻りできないところまで進みました。このときばかりは自分の決断力を褒めたかったです。

 

 

私が梅田芸術劇場で観たのは3月1日と2日のマチネです。本当は1日のソワレも と思ったのですが、どうしても見つかりませんでした。そのせいでWキャストでは唯一、渡辺大輔さんのティボルトを拝見できていません。これに関しては本当に悔しい限りです。以下、個人的感想および解釈です。

 

演出

まず、演出について。賛否両論ある演出ではありましたが、私は全然気になりませんでした。というのも、私が『ロミオ&ジュリエット』(以下、『ロミジュリ』)の楽曲ファンだからです。本作においては素晴らしい楽曲さえ聞ければいいという考えなので、時代設定がいつなのかという問題は私には関係ありませんでした。それほど『ロミジュリ』の楽曲にはいろいろなものをねじ伏せる力があると思います。「ヴェローナ」は何度聞いても鳥肌が立つし、続くキャピュレット夫人とモンタギュー夫人の「憎しみ」では胸が痛くなります。「いつか」でロミオの運命の人への想いとジュリエットの無垢さに救われ、「ティボルト」ではまた胸が痛くなる。なんだかもう、ジェットコースターに乗っているような感じです。

 

キャスト

ここでは以外のWキャストについて書いていきます(私自身がクラシックバレエ以外のダンスがからきしわからないためです)。

まずロミオ(古川雄大さん/大野拓朗さん)。東京で古川さんのロミオを観て「ロミオがいる!」と衝撃を受けたので、もう一度観ることができて本当によかったです。古川さんは、やっぱり初めてじゃないってこともあるのか余裕が感じられました。それでもフレッシュさは失っていないので地味にすごいと思います。大野さんはジュリエットが「あなたの愛も変わる」と歌っているとき首を振って否定するんです。そんなこと絶対ないよ!って。そこがすごく大野さんらしいなと思いました。声質に関しては古川さんが柔で大野さんが剛。

ジュリエット(生田絵梨花さん/木下晴香さん)は、見た目から違います。いくちゃん(生田さん)は前髪ありで、木下さんはなし。これについては本当に好みの問題です。ジュリエットは前髪なしのカツラの方がいいという意見を目にして、それは確かにそうかもしれないとも思いました。いくちゃんは瞳がきらきらしていて、「何も知らない16の乙女」って言われても「うん、そうだよな」としか思えませんでした。木下さんはわりと落ち着いていて、それゆえに感情的になるシーンは説得力がありました。普段は落ち着いているジュリエットがすべてをかけて愛に生きようとしている!って。声質はいくちゃんが剛で木下さんが柔。

マーキューシオ(平間壮一さん/小野賢章さん)は、ちぎさん(早霧せいなさん)が2011年に宝塚版で演じていた役なんですよね。観に行っておけばよかった……  好きな役者がこんな狂った役を演じているのってファンにとっては幸せじゃないですか?私だったら幸せです。より狂ってるのは平間さんの方かな。平間さんは、広瀬さんと声質が似ているような気がします。多分、平間さんの声に艶と空気を少し多めに足すと広瀬さんの声が出来上がる。小野さんは、「ハリーの中の人だ!」というのが第一印象。想像以上に歌もダンスもうまかったのでびっくりしました。声質は平間さんが柔で小野さんが剛。

次に、ベンヴォーリオ(馬場徹さん/矢崎広さん)。勝手な思い込みで馬場さんが低めで矢崎さんが高めの声だと思っていたのですが、正反対でした。私、矢崎さんの歌声好きかもしれない。馬場さんは雰囲気が柔らかいベンヴォーリオで、矢崎さんは鋭さのあるベンヴォーリオ。矢崎さんはマーキューシオ役も観てみたいほどの鋭さです。馬場さんは古川さんと、矢崎さんは大野さんとの組み合わせが合っていると感じました。声質は馬場さんが柔で矢崎さんが剛。

ティボルト(広瀬友祐さん/渡辺大輔さん)は、本当にごめんなさい。渡辺さんのティボルトが観られていないから比較ができない。ただ、動画などで渡辺さんの歌声を聞いた感じと広瀬さんが柔の声質であることを考えると、渡辺さんは高確率で剛。こうしてみるとWキャストはよく考えられているなと思いますね。これで意図的でないキャスティングだと言われても信じられない。広瀬さんのティボルトは私にとってのベスト・オブ・ティボルトです。初めてのティボルトだというのもあるけれど、なかなか広瀬さんを超えるティボルトは現れないんじゃないかと思っています(私の中で)。

ロミオとジュリエットは、それぞれ古川さん×いくちゃんと大野さん×木下さんがベストなペアだと私は思いました。そう思ったのは見た目や声質の点から。剛の声質の人の歌声を柔の声質の人の歌声が包み込むと聞いていて心地よいです。

 

気付いたこと・気になること

一幕と二幕でロミオのインナーが変わっていることに初めて気付きました。一幕はTシャツにジッパー付きのシャツを重ねてその上にあのジャケットだったけれど、二幕では白い襟付きのシャツの上にジャケットになっているんですね。ジュリエットの寝室のシーンでもシャツ一枚の方が早く着られるし、いいですよね。

それから、ティボルトは周りを黙らせるとき「うるさい」って言いがちだなと思いました。ティボルトって直情的な性格だし、周りからの声が本当にうるさくなってきて怒鳴るんだとはわかるんだけど、あんまり「うるさい」って言われると悲しくなっちゃう……(私が) もう少しティボルトに語彙力を与えてあげてください。お願いします。

ティボルト関連ではもうひとつ。死んだ彼の近くで嘆いていた、くるくるの明るい茶髪をポニーテールにしている女性はティボルトの何なんでしょう。「今日こそその日」の前にティボルトに「ジュリエットなんて」と言って怒鳴られていたのも彼女です。周りのキャピュレット女子にも慰められていたし、恋人か何かなのかなと非常に気になりました。

ロミオとジュリエットの恋愛について、両家の夫人は争いを好まない人たちで何より平和を求めている人たちなのに、何故認めてあげられなかったんだろう。何故2人が両家の架け橋になると信じてあげられなかったんだろう。何百年も昔に書かれた話でも、やっぱりこう思わずにはいられません。キャピュレット夫人なんて特に愛に飢えた人で、娘の気持ちは痛いくらいわかるはずなのに。家のためにという夫人の気持ちもわかります。だからこそ最後に両家が手を取り合うシーンでは、本当によかったと心から思うのです。

 

 

私が『ロミジュリ』を観劇できたのは3回だけでしたが、本当に楽しかったです。誰も欠けることなく大楽を迎えられますように。遠方よりお祈りしています。